マネーQ&A

住宅ローンの頭金はどれくらい必要?

2020.06.22

A子さんはいよいよ念願のマイホームを取得しようと思っています。初めての住宅購入はわからないことだらけ。いつも相談に乗ってもらっているFPの石井順子先生に教えてもらうことにしました。

A子さん:
結婚して落ち着いたのでそろそろマイホームを建てようかなと思います。
先生:
人生最大のお買い物ですね!大きな住宅というお買い物もすることだし、夫婦でしっかりと準備を整える必要がありますね。
A子さん:
そんなに大変なことだとは考えていませんでした。住宅メーカーのチラシには家賃並みの返済額とか、頭金ゼロでいいとか。だったら私たちでも建てられるのかなと思って。正直結婚して子どもが産まれてまだ1年。貯めたお金もまだそんなにないです。
先生:
頭金の準備はありますか?

A子さん:
準備はしていないです。頭金を貯めるのを待っていたらすぐには買えないし、頭金ゼロでも買えるのかなと。ただ親に相談したら頭金は購入価格の2割くらいはないと厳しいよって。先生、頭金2割ってそんなに必要なんですか?
先生:
なぜ頭金2割が必要なのかを考えてみましょう。購入価格3,000万円の新築住宅を例にします。住宅メーカーのコストや利益2割ほど(600万円)を考えると実際の物件価格はおよそ2,400万円。3,000万円を借り入れると資産価値は2,400万円で「債務超過」になってしまいます。
A子さん:
「債務超過」ってなんですか?
先生:
債務超過とは負債が資産を上回っている状態のことです。仮に住宅を売っても住宅ローンが返済できないということになります。
万が一購入後間もなく、何らかの理由で返済が困難になり、住宅を売却して借り入れを一括返済したくても売るに売れない状況になってしまいます。ですので、ほとんど頭金を用意できない状況でお家賃くらいの家を購入するのは、実はとてもリスクがあるんです。
頭金を貯めるには毎月コツコツ貯蓄をするのが一番良い方法です。きちんと一定額を貯蓄できなければ将来のローンの返済も難しくなる可能性があります。今は超低金利時代といわれています。特に住宅ローンの金利は低いので、本来は2割と言われている頭金を1割にして、あとの1割は安全で住宅ローンより金利の高い金融商品で運用するというのも良いかもしれません。でもA子さんのところは現在の貯蓄額もまだ多くないみたいだし、住宅購入はそんなに焦らなくていいのかもしれませんね。
A子さん:
やっぱり私たちの考え方は甘かったんですね。住宅購入のことも含め、普段の貯蓄額についてどのくらい必要と考えるべきでしょうか?
先生:
住宅購入時には頭金などの購入費用のほかに諸費用が掛かります。物件価格の1割と考えてみてください。
購入時の税金、登記費用、火災保険料、住宅ローンの手数料や保証料、引っ越し費用や家具、家電などの購入です。この諸費用も住宅ローンに含めることはできますが、その分借入額が大きくなるのであまりお勧めしません。
また、利息も考えて住宅ローンの借り入れ額をなるべく抑えたいということで、貯蓄の多くを頭金にする方も見受けられますが、それもお勧めしません。それから、住宅購入に貯蓄を全部つぎ込むのも危険です。住宅ローンの頭金以外に、一般的な手元資金で、いざという時にすぐに使える貯蓄額はが200万円くらいあると安心です。万が一の病気や失業など、不測の事態に備えるお金です。また、住宅ローンを含め借り入れがある場合は、1年間分の返済額ほどの上乗せ貯蓄があると、いざという時安心ですよ。
現在、住宅ローンには住宅ローン控除というお得な制度があり、ローンを組んでから一般的には10年間、税金の控除が受けられます。ライフイベントについてしっかり考え、夢のマイホーム購入に向けて資金計画をきちんと立てましょう。住宅ローンを返済しながら、きちんと将来資産形成をしていくことが大事です。
A子さん:
教えていただいてよかったです!マイホームは当分先になりそうです。家族とよく話し合ってきちんと計画を立ててお金を貯めていこうと思います。
先生:
その方がいいと思います。私も応援してますよ!がんばってください。

  • Profile
  • ファイナンシャルプランナー
  • 石井 順子(いしい  じゅんこ)
    三菱銀行、日興コーディアル証券、日本生命での勤務を経て、独立系ファイナンシャルプランナーとして2007年11月より開業。銀行、保険会社、証券会社勤務の経験を活かし、どこの金融機関にも属さない、中立・公正の立場をとっている。得意分野は家計見直し、資産形成、生命保険。新潟市を中心に活躍中。
   

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